「韓国語」といふ耳障りな言ひまはしを耳にするやうになつた。朝鮮語のことである。この十年二十年ほどのことである。
いふまでもなく、朝鮮とは地名あるいは地域名で、そこの人が話すことばは 朝鮮語。國の名がどうあれ、國の名前が何であらうかには関係がない。
ブラジルといふ國がある。そこで話されてゐるのはポルトガル語である。誰もブラジル語とはいはぬ。また、アルゼンチンといふ國がある。そこで話されてゐるのはスペイン語である。誰もアルゼンチン語とはいはぬ。
言葉の区分のことだもの。どの國で話されやうが、ポルトガル語はポルトガル語、スペイン語はスペイン語、英語は英語、日本語は日本語。ただそれだけのこと。
もちろん土地が変はれば言葉も変わる。それを区別したい場合には、ブラジルのポルトガル語とかポルトガルのポルトガル語といふ。
英語の場合は皆さんご存じの通り。アメリカでもオーストラリアでも話されてゐる。英語はイギリス語のことであるが、ことさら区々には別の言葉とはしてゐない。それぞれの違いをいふときには、「アメリカ英語」「米語」「オーストラリア英語」などといふことご存じの通り。
だから朝鮮で話されてゐる言葉は朝鮮語。英語では「Korean」、日本語では「朝鮮語」のこと。単純明快。
朝鮮語を「韓国語」といふ人は、北朝鮮で話される言葉は何と呼ぶのやら。「北朝鮮語」? まさか。
あたりまへのことをあたりまへに淡々といへばよいだけの話です。
(了)