「赤」のつくことば
信号には赤色もある。「赤」といふ言葉も「靑」と同じく廣いものを指す言葉で、「赤」がつくことばを思ひつくまま書き出してみる。
- 赤蛙
- 赤柴犬
- 赤毛
- 赤レンガ
- 赤さび
- 赤信号
- 赤だし
- 赤味噌
- 赤つち
- 赤松
- 赤門
これもきりがない。このほか、「赤字」や「赤ら顔」まで入れるといくらでもある。「靑」に負けず劣らずたくさんある。否、「赤」がつく言葉のほうがきつと多ひでせう。数えたことはありませぬが。
みそ汁の赤味噌を指して「赤ですか茶色ですか」ときかれたら「茶色です」とか、人によつては、「どちらかとへえばこげ茶色です」とこたへるでせう。青のときと同じです。だうしても区別したいときには、「朱色」「紅色」「茶色」「紅梅色」「桃色」と使ひ分ける。
色の区別のための「赤」 赤柴
柴犬といふ犬がある。愛らしい犬である。それぞれに色柄がある。一つとして同じものはない。とはいへ、区別はしたい。そこでおほよそには、「白」「黑」「赤」と分ける。「胡麻」といふ区分を加へることもある。「赤柴」の色はいはゆる「赤色」ではない。朱色でもないし紅色でもない。そんなこと誰でもわかる。しひていふなら薄茶色か。
ではなぜ「赤柴」といふか。他と区別するためである。他とは何か。「白」「黑」である。色の言葉で何かを区別したいときには、まづは「白」「黑」「赤」「靑」を使ふ。それで足らぬなら、詳しい色名と濃淡のことばを出す。
信号の「靑」は、「赤」でも「黃」でもない色といふことに過ぎぬ。信号をことさら綠といふは、赤柴を「薄茶柴」とひ、赤だしを「茶だし」といふに同じことやな。
(了)