イギリスの地名もややこしい

イギリスはポルトガル語

 イギリスといふ國がある。イギリスという呼び名は日本での呼称でポルトガル語が由来とされる。ただし、オランダ語の読みの「 エンゲルス 」が、「イギリス」といふ日本語発音の直接の起源かも知れぬ。いずれにせよ日本での「イギリス」の呼びかたの由来は英語ではない。戰國時代から江戸時代初期のこと。のちに「 英吉利」の漢字をあてるのは江戸中期以降といはれる。

イギリス人による呼称はUKかBritain

 現在のイギリスといふ國の英語による正式名称はUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandを省略して「UK」、日本語での正式呼称も「 グレートブリテン及び北アイルランド連合王国 」とする。条約などの正式文書にはこれを使ふ。

 現在のイギリスはEngland、Schotland、Walse、Northern Ireland の四國の連合体で、それゆへ、「連合」といふ言葉が國号に入る。なので、ポルトガル語の「イギリス」の更に由来となる英語のEngland自体は、我々のいふ「イギリス」全体の一部分であるし今でもさう。ではイギリス人は自分たちの連合全体を普段はどう呼ぶか。UK(ユーケイ)、United KigdomあるいはBritain(ブリテン)が一般的のやう。なほ、私の經驗では、名詞形のBritainは稀で、形容詞のBritishのはうが頻度は高い。調べたわけではないので確かではない。

England, Walse, Scottland, North Irelandで言葉も違う

 なほ、それぞれ言葉も違ふ。EnglishはEnglandの言葉、Scottishはスコットランド語、Welshはウェールズ語、Irishは北アイルランドの言葉。

 スコットランド語とアイルランド語はゲール語の一部でEnglishとは別の言葉。ウェールズ語はケルト語の仲間でこれもEnglishとは別。今では、イングランドの言葉の英語が事実上の共通語であるが、それぞれの國で公用語として英語以外にあることは知つておいたはうがよゐ。

現地語読みなら「イギリス」は間違ひ

 いづれにせよ、日本語での「イギリス」といふ呼び名はイギリス由来ではなく、また、現地人も連合國全体を語る時にEnglandとは呼ばぬ。

 日本での外国の呼び名は英語が優勢である中、当のイギリスの呼び名が非英語であつて現地語ではないのが何とも面白い。現地語読みを優先する人は日本でのイギリスの呼称を何とすべきなのでせうか。ブリテンかユーケイか。

外国の地名の英語読みを正しく知ること

 「ドイツのミュンヘン」は英語では「ジャーマニーのミュニク」といふ。外國人と話すときは英語で話すことがほとんどで、たとへドイツ人と話す場合でも双方とも英語の呼び名のジャーマニーやミュニクを使ふ。日本人がドイツ人と英語で話すときには、日本のことを ジャパン といふのと同じ。I’m from Nihon.とは言はぬ。

 非英語國の地名だけでなく、英語國の地名も英語でのいひ方を正しく知つておくべき。イギリス人と話すときにも、EnglandとUKは使い分けたひもの。相手がスコットランド出身ならなほのこと。

 (了)